クリニックを開院して、さまざまな症状を持つ患者さんを診るようになり、改めて感じていることがあります。

診療では、一つの症状や一つの検査値を見るだけではなく、患者さんの中にあるいくつもの「点」をつないでいくことが大切だということです。

先日ブログ記事にも書いた”connect the dots ”に近いのかもしれません。

症状、発症した時期、その後の経過、既往歴、服用している薬、生活背景、そして検査結果。

それぞれは一つの「点」です。

それらをつないで、

「この患者さんの身体では、どんなストーリーが起きているのだろう?」

と考えてみる。

 

一つのストーリーで説明できるか

例えば、ある患者さんに動悸、息切れ、めまい、倦怠感という複数の症状があったとします。

それぞれについて、

動悸だから心臓。
めまいだから耳や脳。
倦怠感だから年齢や疲労。

と別々に考えることもできます。

しかし、もし一つの病態ですべてを説明できるのであれば、その方が理にかなっていることも少なくありません。

一見ばらばらに見える症状でも、点をつないでみると、

「もしかすると、これらはすべて同じ原因から起きているのではないか?」

という一つのストーリーが見えてくることがあります。

私はこれまでの診療でも、まずはこのように一元的に説明できないかを考えることを大切にしてきました。

 

一方で、患者さんの身体はそれほど単純ではありません。

どうしても一つのストーリーでは説明できない症状や検査結果が残ることがあります。

そんなときには、

「これは別のことが同時に起きているのではないか?」

と考え直します。

一つのストーリーだと思っていたものが、実は二つ、時には三つの病態が同時に進行していることもあります。

つまり診療では、

一つにつながる点は、つなぐ。
つながらない点は、無理につながない。

この両方が大切なのだと思います。

ストーリーは完成した「答え」ではない

そして、もう一つ大切なのは、最初に考えたストーリーに患者さんを当てはめてしまわないことです。

診察や検査によって新しい「点」が加われば、ストーリーを組み立て直す。

予想していた結果と違えば、

「自分が考えていたストーリーが違うのではないか?」

と一度考え直してみる。

ストーリーは最初から決まっている「答え」ではなく、診療を進めながら確かめ、必要なら修正していく仮説なのだと思います。

木を見て、森を見る

「木を見て森を見ず」という言葉があります。

一つの症状、一つの臓器、一つの検査値を詳しく見ることはもちろん重要です。

しかし、ときどき少し離れて、

「この患者さん全体を最も自然に説明できるストーリーは何だろう?」

と考えてみる。

点を見る。
点をつなぐ。
そこからストーリーを考える。
そして、もう一度全体を眺める。

専門領域かどうかを考える前に、まず目の前の患者さんに起きていることを考えてみる。

クリニックを開院して幅広い患者さんを診るようになり、そんな診療の基本を、私自身改めて大切にしたいと感じています。