先日、以前から監修を行っている医療漫画「デリバリードクター」の新作の監修を担当させていただきました。(作者の先生より、掲載許可をいただいております。)

いつも読み応えがあり、専門的な内容も深く掘り下げ、こだわって制作されていることがわかる質の高い作品であると思っています。今回も監修を通して改めて考えさせられたことがあります。

ちょうどその少し前、産業医講習でアルコール依存症治療について学ぶ機会がありました。

そこで紹介されたのが、「動機づけ面接(Motivational Interviewing:MI)」という考え方です。

これは1980年代にミラーとロルニックによって提唱され、アルコール依存症だけでなく、禁煙指導や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の管理、服薬指導、リハビリテーションなど、多くの医療現場で活用されています。

この考え方で大切にされているのは、患者さんの中にある

「変わりたい。」
「でも、変わりたくない。」

という二つの気持ちを否定しないことです。

医療者は、医学的に正しいことを知っています。

だからこそ、
「このままでは危険です。」
「生活習慣を改善しましょう。」
「薬をきちんと飲みましょう。」

と伝えたくなります。

しかし、患者さんにもそれぞれの生活があり、仕事があり、家庭があり、不安や葛藤があります。

「分かっているけれど、今はできない。」

そんな気持ちを責めても、人はなかなか変わることができません。

動機づけ面接では、その心理的な抵抗を否定せず、患者さん自身の中にある「変わりたい」という気持ちを大切に育てながら、一緒に前へ進んでいくことを目指します。

今回の監修をしながら、この考え方と重なる部分を強く感じました。

循環器診療も同じです。

高血圧、脂質異常症、糖尿病、禁煙、減量、運動習慣…。

治療が必要であることは間違いありません。

しかし、必要だからといって、一方的に押し付けるだけでは長続きしません。

患者さんの生活背景や価値観を理解し、その方が無理なく続けられる方法を一緒に考えていく診療、それこそが当院が目指す方向性です。

病気だけではなく、その人自身を診る。

慈恵医大の建学の精神である

「病気を診ずして病人を診よ」とは正にこのことです。

今回の監修を通して、その思いを改めて確認することができました。

作品を読む方それぞれが、何かを感じ、考えるきっかけになれば嬉しく思います。そして私自身も、このような医療をこれからの六町ハートクリニックで実践していきたいと考えています。