「In the end, we are our choices. 人は選択の結果である」― 開業と選択理論

Amazon創業者である Jeff Bezos の、プリンストン大学卒業式での有名なスピーチがあります。

ベゾスはもともとウォール街で働き、誰もが羨むような高額報酬を得ていました。しかしAmazonを立ち上げる前、上司に相談した際、

「起業すれば、今の安定や待遇を失う可能性がある。機会費用を考えるべきだ」

と助言されたと言います。

“機会費用”とは、「ある選択をしたことによって、本来得られたかもしれない別の利益を失うこと」です。

つまりベゾスは、

  • 安定した立場
  • 高い報酬
  • 将来の保証

を手放す可能性を理解した上で、それでも「挑戦する」という選択をしたわけです。

彼は48時間考えた末、

「挑戦しなかった未来の自分は、きっと後悔する」

と考え、Amazon創業の道を選びました。

さらにベゾスはスピーチの中で、「gifts(与えられたもの)」と「choices(自ら選んだもの)」を対比して語っています。

才能、環境、家柄、教育は“与えられたもの”です。しかし人生を形作るのは、それ以上に「何を選んだか」だと述べています。

そして最後に、

「つまり、人は選択の結果である」

という言葉に行き着きます。

私はこの考え方に強く共感しました。

そして後になって、この考え方は William Glasser 博士の「選択理論」にも通じることに気づきました。

グラッサー博士は、人間の行動は基本的に“自分自身の選択”であると説明しています。

もちろん、人は環境の影響を受けます。職場、家庭、人間関係、経済状況――それらは無視できません。

しかし最終的に、

  • どう行動するか
  • どう生きるか
  • 何を優先するか

を決めるのは自分自身だという考え方です。

つまり人生とは、「外から与えられるもの」だけで決まるのではなく、自らの選択の積み重ねによって形成されるということです。

クリニックを作ることは、単なる転職ではありません。

理念を考え、
地域を選び、
診療スタイルを決め、
スタッフを集め、
責任を引き受ける。

それは一つの“起業”です。

もちろん不安はあります。勤務医という立場を離れることで失うものもあるかもしれません。

まして心臓外科医という仕事は、職人的な手技の研鑽の上に成り立っています。適応判断、手術、術後管理、外来診療まで幅広い知見を必要とし、長い年月をかけて積み上げていく世界です。

31年間積み重ねてきたものを離れ、新しい環境に挑戦することは、ある意味ではリスクの大きい選択なのかもしれません。

それでも、「自分で選んだ人生を歩む」という意味では、非常に大きな挑戦でもあります。

ベゾスは、

「人生を振り返る最もシンプルな方法は、自分がしてきた選択を並べることだ」

と語っています。

結局のところ、人は選択の積み重ねによって形作られていくのでしょう。

環境や状況に影響されながらも、最終的にどう生きるかを決めるのは自分自身です。

開業もまた、その一つの選択です。

安定を離れる不安もあります。
失うものもあるかもしれません。

それでも、自分で選んだ道として歩んでいきたいと思っています。

そして80歳になった時に、

「あの時の選択も自分だった」
「この道を選んで良かった」

と静かに振り返ることができれば、それで十分なのかもしれません。

※本文中の Jeff Bezos のエピソードは、戸塚隆将 氏による『COURRiER Japon』の記事を参考にしています。